校長室から
瀬戸内寂聴さんの言葉
◆瀬戸内寂聴さんの言葉
●昨日の報道で、瀬戸内寂聴さんの訃報を知りました。●瀬戸内寂聴さんの豊かな人生経験を土台にした、ユーモアと含蓄含む法話を拝聴することができなくなったという残念な思い同時に、白寿の大往生であったなと感じました。●瀬戸内寂聴さんは、若くして結婚し長女を出産するも夫の知人への恋心から出奔することを始め恋多き人生を歩まれたこと、●作家として女流文学賞、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞を受賞する活躍をしたこと、●51歳の時に中尊寺で得度し、法話を出家者の義務と考え、京都・嵯峨野に結んだ寂庵で法話の会を開催していたこと。その法話は、日本ばかりか海外からも聴聞客が多く訪れていたことなどをご存知の皆様を多いだろうと思います。●本日は、瀬戸内寂聴さんへの哀悼を込め、代表的な言葉をいくつかご紹介します。
◆怖がらないでね、人を愛した方がいいですよ。
やっぱり人は人を愛するために生まれてきたような気がします。だからあんまり選り好みしないで、愛した方がいいです。身を守って誰も愛さないでね、怪我もない代わりに、死んで泣くほどの人も誰もいなかったなんて、そんな一生も寂しいですよね。素敵な人だと思って愛したら間違っていて、つまらない人だったってこともあります。その時はもうさっさと別れたらいいんです(笑)。
◆言いたいことを言いなさい。
嫁にも姑にも亭主にも。言いたいことを言った方が胸がすっとします。穴掘ってでも言った方がいい(笑)。それが健康法の一つです。
◆“和顔施(わがんせ)”といって、笑顔もお布施になるんです。
物をあげる“物施”や、人に親切にする“心施”というお布施もありますが、なかなかできませんね。でも和顔施ぐらいはできるわよ。人に会ったらにっこりすればいいんですからね。
◆出会いというもの、縁というものはね、生きてる時に大切にしなきゃだめですよ。
明日はあなたが死んでるかもしれない、相手が死ぬかもしれない。だから、今日好きだと思ったら、今日言ってくださいね。
◆もう済んだことは、忘れましょう。
私たちは「忘却」という能力を生まれた時から与えられているんですね。日にちが経てば、どんな嫌なことも辛いことも自然に薄らぎ、忘れることができます。だから人間は生きていかれるんですよ。
◆何か物事を始める時は、「これは必ず成功する」というプラスイメージを持ってください。
絶対に幸せになるぞっていう夢を描けば、本当にそうなるのよ。私が初めて歌舞伎の脚本を書いた時ね、もし失敗してしまったら、せっかく今まで80年もかけて築いてきたものがすべて崩れますからね、とても怖いことなんだけど、そうは考えないの。必ずできると思ってね、歌舞伎座の三階席まで満員のお客様が、ワーって手を叩いてるところをイメージするんですよ。そうしたらその通りになったの。
◆笑顔を忘れないでくださいね。
憂うつな悲しそうな顔をしてると、悲しいことが寄ってきます。いつも朗らかに明るくしていれば、いいことが寄ってくるんですよ。生きていれば、悲しいことも苦しいことも、腹の立つことも起こります。その度に姿勢を悪くしてしまったら、悲しいことや苦しいことがもっともっと重くなるんです。ですから、「負けるものか」と上を向いて、気持ちを前向きにしていればね、自然とまたいいことが起こるんです。
◆自分の身の丈にあった望みをいだくことですね。そうすれば欲求不満にならない。
私たちはそれを忘れて、到底自分の手に入らないものを欲しがるんですね。小さな欲望でも満足することがあれば幸せなんですから、そのことに感謝してください。
◆人間は、幸せになるためにこの世に送り出されてきたのだと思います。そして幸せとは自分だけが満ち足りることではなくて、自分以外の誰かを幸せにすることだと考えてください。
自分自身の可能性をできるだけ大きく切り開いて生きること、これもひとつの幸せです。しかし、あなたがこの世に生きて送り出されたのは、誰かを幸せにするためなんですよ。自分の命は誰かの役に立つためにあるのだと考えれば、この世はむなしいという気持ちもなくなるでしょう。
◆やっぱり自分が楽しくないと、生きててもつまらないですよ。だから何でもいいから、自分のために喜びを見つけなさい。そうすると生きることが楽しくなりますよ。
苦しい苦しい、辛い辛いばかりじゃあ、生きがいがないですからね。喜びを見つけてくださいね。内緒の喜びの方が楽しいですね。楽しくないとつまらないじゃないの。もうどうせ死ぬんですからね、あなたたちも死ぬのよ、やがてね(笑)。だから生きてる間は全力を尽くして生きましょう。
ちょっと一息(お勧めのミステリー)
◆ちょっと一息(お勧めのミステリー)
著書名:『オリンピックの身代金』 作者名:奥田英朗
●本日紹介するのは、奥田英朗さんが著した『オリンピックの身代金』です。●爆弾魔と呼ばれた草加次郞がモデルとなっているミステリー小説です。●2段組で、読み応えはありますが、事件当日の緊張、刑事部のチーム感、刑事部と公安の対立、そして島崎国男(主人公:犯人)という哀愁ある人物像への共感といった、読みどころが満載です。●また高度経済成長時代へと向かう東京の姿、初めてトーストの朝食を食べる場面など、時代のディテールもふんだんに差し込まれた、骨太な社会派ミステリー小説です。●本書と併せて、「吉展ちゃん誘拐事件」をモデルとした『罪の轍』も是非おすすめです。
●『オリンピックの身代金』の大筋は、1964年(昭和39年)、オリンピックを成功させることで、戦後日本における復興の姿を世界に是が非でも示そうとする国家と、そのオリンピックの開催を阻もうとする若きテロリスト(島崎国男:東北地方出身)との攻防戦が、時間軸を行きつ戻りつしながら56章(日付け)によって描かれています。●「いったいオリンピックの開催が決まってから、東京でどれだけの人夫が死んだのか。ビルの建設現場で、橋や道路の工事で、次々と犠牲者を出していった。新幹線の工事を入れれば数百人に上がるだろう。それは東京を近代都市として取り繕うための、地方が差し出した生贄だ。」と島崎国男は憤ります。●戦後日本の繁栄、特に都会のめまぐるしい発展は、地方から出てきた労働者の支えに他なりません。●だからこそ、島崎国男は、「我々は永遠に奪われるだけの人生を過ごすわけにはいかない。搾取するばかりの資本側と、安い対価と引き換えに労働力を差し出すしかない声なき人々という関係を打破するのだ。」という思いに至るのです。そんな敵意がやがて、東京オリンピック阻止へと集約されていくという物語です。●犯人(島崎国男)が提示されているので謎解きの要素はありません。しかしそれでも最後まで読み手の心を捕らえて離さないのは、島崎国男という男の背景や島崎が自分と関わる人物に影響を受ける心理描写が丹念に描き込まれることで、島崎国男がなぜ犯罪に向かい、どんな手法で事を進めようとしたのか、そのミステリアスな動機一点に内容が凝縮されているからです。●そう意味での異質なミステリー小説です。
●この小説の魅力は他にもあります。昭和39年当時の東京が実によく活写されているのです。●高くそびえ立つ東京タワー、ぐるりと張り巡らされた首都高速道路、オリンピックに照準を合わせて進められた代々木体育館や武道館そして東海道新幹線の完成、旧財閥の解体とそれに伴う公団住宅の建設ラッシュなど、正に高度成長時代の到来を告げています。●銀座を闊歩するみゆき族、ラジオから流れてくるビートルズのロック・サウンド、新しい時代への幕開けに満ち溢れています。●しかしその一方で、ヒロポンを打つしかない労働者の過酷な日々、朝鮮人の裏社会、東京湾岸地区(品川や大森)埠頭の光景、漁業の衰退など、新しいものに向かって闇雲に走り続ける人、その駒にされる人、流れに取り残される人、生き延びる人、死んで行く人、忘れられていく人。●戦後復興五輪開催前の当時の政治状況や大衆の空気感も丹念に描写され、当時の東京風土を知る、一種の歴史小説としても楽しめるのです。
●東京オリンピック開会前の3ヶ月ほどの期間を描いた本作品。東京で起こる隠された攻防戦が、スピード感あふれる緊迫の中で展開されていきます。そして読後感として未来への希望という心地良さを醸成できる秀逸作品ですので機会がありましたら是非、一読してみてはいかがでしょう。
ちょっと一息(お勧めのミステリー)
◆ちょっと一息(お勧めのミステリー)
著書名:『カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『ヨルガオ殺人事件』
作者名:アンソニー・ホロヴィッツ
●本日紹介するのは、イギリスの作家であり脚本家でもあるアンソニー・ホロヴィッツが著したミステリー小説です。●ホロヴィッツは、「アレックス・ライダー」シリーズや、コナン・ドイル財団公認のシャーロック・ホームズ・パスティーシュ『絹の家』『モリアーティ』を執筆するなど、多数の著書がある一方、人気テレビドラマ「刑事フォイル」など脚本家として数多くの作品を手がけています。●アガサ・クリスティへのオマージュ作『カササギ殺人事件』では『このミステリーがすごい!』『本屋大賞』の1位に選ばれるなど、史上初の7冠を達成しました。●また〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ『メインテーマは殺人』『その裁きは死』でも、年末ミステリランキングを完全制覇しています。●そしてこの度、最新作として『ヨルガオ殺人事件』が発刊されました。●翻訳作品は、その訳者の力量に作品の善し悪しが現れてしまうものですが、山田蘭さんの訳も素晴らしいのです。
●江戸川乱歩や横溝正史など古典に分類される作品、現在活躍中の東野圭吾さん(ちなみに、私は『幻夜』と『白昼行』が特にお薦め)なども面白いミステリー作品を著していますが、ミステリー小説をあまり読んでいない私が、今一番お薦めするミステリー作家は、このアンソニー・ホロヴィッツです。●ミステリー小説ですので、そのさわりをほんの少しだけ、紹介いたします。
<1>『カササギ殺人事件(上・下)』(山田蘭訳、創元推理文庫)
葬儀の場面から始まる。古い英国の村で二つの殺人事件が起きる。ここで登場するのは名探偵アティカス・ピュント。しかし探偵アティカス・ピュントの物語(探偵が事件を解決する)がいつしか、そのアティカス・ピュントを生み出した作者アラン・コーウィンの物語へ。事件(アティカス・ピュントが手がけていた)の結末部分が消失したまま、その作者アラン・コーウィンが死んでしまう。その死の真相を追いかける編集者スーザン。アティカス・ピュント事件の結末部分を探し出すためには、知るためには、作者アラン・コーウィンの心理を探る必要がある。そしてその結末部分が解明されたとき、実はアティカス・ピュントの物語が鍵になっていた。つまり、入れ子構造の作品。名探偵ピュントの事件とスーザンの事件の両方の謎解きが楽しめる。見事なストーリーに驚嘆する作品。
<2>『メインテーマは殺人』(山田蘭訳、創元推理文庫)
主人公は著者アンソニー・ホロヴィッツその人。ホロヴィッツは、元刑事のホーソーンから「俺(ホーソーン)が殺人事件を解決する姿をメインとした本を書かないか」と提案を受ける。そんな折、裕福な老婦人ダイアナ・クーパーが殺される。それも葬儀社で自分の葬儀の手配をした日に。そしてクーパー夫人の息子ダミアン・クーパー(有名俳優)も惨殺される。クーパー母子を殺害したのは誰か。謎が謎を呼ぶ。ホーソーンは一向に自分の推理を明らかにしない。焦れた著者ホロヴィッツは自分で解決しようとするのだが。騙される快感に酔いしれる作品。
<3>『その裁きは死』(山田蘭訳、創元推理文庫)
作者アンソニー・ホロヴィッツ本人が再び作品に登場する。『メインテーマは殺人』に続くホーソーン&ホロヴィッツ シリーズ第2弾作品。実直さが評判の弁護士が殺害される。裁判の相手方だった人気作家が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。弁護士が過去に起こした過ち。偶然な出来事も絡み合い、事件の真相は混迷を帯びる。用意周到にちりばめられた仕掛け(解明のヒント)を楽しめる作品。
<4>『ヨルガオ殺人事件(上・下)』(山田蘭訳、創元推理文庫)
『カササギ殺人事件』の続編。イングランドでホテルを経営しているトレハーン夫妻がスーザン(元編集者)を訪ねてくる。ホテルでは8年前に殺人事件が起こっている。娘のセシリーはアラン・コーウィンが著した『愚行の代償』を読む。そのことで8年前にホテルで起きた殺人事件の真犯人に気づく。そしてセシリーは犬の散歩途中に失踪してしまう。『愚行の代償』には、本編『ヨルガオ殺人事件』の真相、真犯人を指し示すヒントがここかしこに埋まっている。アラン・コーウィンは『愚行の代償』に、ホテルの人物をモデルとして登場させていたからだ。『カササギ殺人事件』に勝るとも劣らない構成の妙に尽きる作品。
礼儀における「心」と「形」
◆礼儀における「心」と「形」◆
●「礼儀」について書かれたいくつかの書籍を目にする機会がありました。●本日は、その内容を紹介します。
●日本の礼儀作法の原点は武家社会で確立されたと言われています。●時の権力者が儀式を通して、礼儀作法を武士たちに教え、社会や人間関係を円滑に成り立たせようとしたことが始まりです。●食事の仕方や手紙の書き方、教養として身に付けておきたい事柄などの礼儀作法は、元々は公家文化の作法であり、それが武士が台頭し始めた時代、つまり室町時代に武士を中心に一般的に確立されたと考えられています。●また、その礼儀作法は時代を経るにつれ、完璧な「形」を求めていたものが、「自分のできる範囲で、同じ空間にいる人同士が互いに心地よく過ごそう」という「心」を大切にする考え方に変化していったようです。●そして江戸時代に儒教の影響を受け、現在に通じる礼儀(「心」)を現すための「形」の原型が形作られていくのです。●日本にこうした「心」を「形」にする作法があるように、西洋にはマナーがありますが、目指すところは同じであり、互いに心地よく過ごすためのものであることには変わりはありません。●ただ、日本の場合は、「相手を慮(おもんぱか)る」ことを優先するという自己抑制力が強く働くことに特徴があるようです。●だからこそ、日本人のコミュニケーションには、すべてを表現しないところに美しさを求めているのです。●それを「遠慮」という言葉に置き換えることはできますが、「遠慮」は決して我慢をすることを意味してはいません。●遠くを慮って表に現さないことで、相手に負担をかけず、最終的に相手の心地よさや自分の幸せ(心地よさ)につなげているのです。
●小笠原流礼法・宗家の小笠原敬承斎さんが、次のようなエピソードを語っていました。●先代から、お焼香の作法を習ったあるお弟子さんがいました。そのお弟子さんが「お葬式の時、先代からお焼香の作法を学んでいたおかげで恥をかきませんでした」という旨の話をしたそうです。●それを聞いた先代は、「作法とは、悲しい気持ちを持って遺族や周りの人に失礼のないように故人を悼む、ということを含めてのものです。自分がどう美しくできたかにポイントが置かれた心根は、礼法に反しています。」と、非常に厳しい言葉で諭したそうです。●礼儀とは、「自分のできる範囲で、同じ空間にいる人同士が互いに心地よく過ごそう」という「心」なのですから、まずは亡くなった方へ「心」を寄せる思いこそが大切であり、そこで相手の方々が不愉快な思いをしないための基準としての礼儀作法があることを端的に表した話だと感じました。
●本市では平成25年度から、学校教育を中心に「ABC/R」運動を展開しています。「R:立腰(正しい姿勢)」を中核として、「A:あいさつ」「B:時間前行動」「C:環境を整える」をスローガンに、明日を担う子供たちに社会の一員として豊かに生きるための基礎的資質を培うための運動です。●これらの運動においても、「自分のできる範囲で、同じ空間にいる人同士が互いに心地よく過ごそう」という「心」がベースとして展開されなければ、運動自体が形骸化してしまうのではないかと危惧しているところです。●周囲の大人から言われるからという「形」だけの「あいさつ」、「時間前行動」、「環境整備」から、その「心」を大切にした子供たちの姿を描きながら、日々の声かけを続けているところです。
津田寬治さんの言葉
◆俳優の津田寬治さん◆
●本日は、俳優の津田寬治さんのインタビュー記事から、「人との出会い」についての津田寬治さんの言葉や内容のさわりを紹介いたします。
●津田寬治さんは、1933年代「ソナチネ」で映画デビューし、「HANAーBI」や「模倣犯」、「シン・ゴジラ」など、多くの映画に出演しています。また「花燃ゆ」、「西郷どん」などのテレビドラマや舞台でも活躍し、最近ではNHK大河ドラマ「青天を衝け」で武田耕雲斎役としての熱演も記憶に新しいところです。
●津田寬治さんは、「僕には、人生に影響を与えてくれた出会いがたくさんあります。そして人との出会いなくしては、今の自分はない」と語っています。●津田寬治さんは、小学生の時、集団行動が苦手で、どちらかというと学校では怒られることが多かったようです。そんな自分に当時の担任の先生が、「先生は津田の絵が一番好きだな。イキイキとした感じが伝わってくる」と、クラス全員の前で褒めてくれたことがあったそうです。●先生に褒められたのは生まれて初めてのことで、とても幸せな気分になったと述べています。そして、この経験がその後の自分を奮い立たせるモチベーションとなると共に、自分に自信が持てるようになったと語っています。●津田さんにとって、この先生との出会いが自尊感情を高め、何事にも積極的に取り組む原動力となったのです。●また、「劇団東俳」の演技レッスンで、講師の先生に初めてやった芝居が褒められ、その後のレッスンに力が入ったことや、劇団の友人から「お前さあ、自分はすごいと思っているかも知れないけど、お前みたいな奴はどこにでもいるし、それをこれから知ることになるよ。そこで落ち込んでやめるか、でもがんばろうと思うかどうかは自分次第だからね。」と言われ、社会の厳しさを自覚し、自分の中で何かが覚醒したように感じたことなど、人生には、自分を変えるような言葉との出会いがあったと語っています。●そして、有名人や偉人のものでなくとも、仮に相手が深く考えずに発したひと言であっても、自分にとってちょうどよいタイミングにもたらされた言葉が覚醒のきっかけになるものだと語っています。●その後も津田寬治さんは、北野武さんとの出会いなど、人生を変えるほどの大切であり重要な出会いをたくさんします。●その中でも私が特に印象に残ったのは、今は亡き大杉漣さんとの出会いです。●北野武監督率いる「北野組」で二人は出会うのですが、大杉漣(俳優として大御所)さんの津田寬治(当時無名の俳優)さんへの思いに感動したからです。●大杉漣さんは、竹中直人監督に津田寬治さんを紹介します。●北野武監督との出会いもそうですが、この竹中直人監督との出会いが、津田寬治さんのその後の俳優としての飛躍へつながります。●大杉蓮さんは、当時まだ無名であった津田寬治さんに対しても同じ目線で接してくれたばかりではなく、この無名の俳優を積極的にアピールするために、自分の用事(約束)を反故にしてまでも、この若手俳優の今後の人生のために奔走したのです。●大杉漣さんが紡いでくれた縁により、今の「津田寬治」という俳優がいることに、人との出会いの大切さ、人生が広がっていく様を感じます。●そして人との出会いを大切にし、それを自分の人生の広がりに生かしてきた津田寬治さんの人柄の素晴らしさにも感動します。
●津田寬治さんのインタビュー記事の内容から、人は何のために生まれてくるのだろうと考えた時、その答えの一つは、多くの人に出会うためなのだと考えます。人は他者から多くのことを学び、成長していけるのですから。
二尊院の言葉
◆二尊院の言葉◆
●本日は、京都の嵯峨にある「小倉山 二尊院」の言葉を紹介します。●この言葉は、私が35歳の時、当時勤務していた学校長より、良いことが書かれているからといただいた言葉です。
人生五訓
あせるな/おこるな/いばるな/くさるな/おこたるな
心の糧七ヵ條
一 此の世の中で一番楽しく立派なことは生涯貫く仕事をもつことである
一 此の世の中で一番さみしいことは自分のする仕事がないことである
一 此の世の中で一番尊いことは人の為に奉仕して決して恩に着せないことである
一 此の世の中で一番みにくいことは他人の生活をうらやむことである
一 此の世の中で一番みじめなことは教養のないことである
一 此の世の中で一番恥であり悲しいことはうそをつくことである
一 此の世の中で一番素晴らしいことは常に感謝の念を忘れずに報恩の道を歩むことである
幸福の道
家内仲よく ゆずりあい / 先祖に感謝 親を大切に
空気に感謝 社会に報恩 / 身体を大事に 仕事に熱心
人には親切 我が身は努力 / よく働いて 施しをする
不平不満や 愚痴を言わず / 人を恨まず 羨まず
口をひかえて 腹立てず / 親切正直 成功のもと
気(きはながく) / 心(こころはまるく)
腹(はらたてず) / 口(くちつつしめば)
命(いのちながかれ)
●耳の痛いお言葉ばかりです。●今でも時々、この言葉を思い出しては、自己の言動を反省をしているところです。
ちょっと一息(お勧めの作者)
ちょっと一息(お勧めの作者)
◆村上春樹さんの世界◆
●本日は、村上春樹さんの小説について、書評的手法を用いた紹介を試みようと思います。●村上春樹さんの作品は、「現実の世界」と「過去の世界」、「こちら側の世界」と「あちら側の世界」といった対立軸をベースとし、そこに「呪い」や「暴力」といった「悪」をテーマに織り交ぜて、登場人物の苦悩、厭世、勇気、成長などを描いた内容となっていると考えています。●例えば、『羊をめぐる冒険』は、「父」から「羊」の継承(裏社会の権力者として世の中を牛耳る者)の呪いをかけられた鼠(主人公の親友)の話ですが、自殺することで悪の継承を拒否するとともに、「死の世界」から「現実の世界」に残存する「悪」を抹殺するという小説です。つまり父の呪いを自らの死をもって打破しようとした鼠の苦悩が描かれています。●また『ノルウェイの森』では、「過去の世界」に引き寄せられた直子が、「現実世界」で生きることよりも自らの死を選択するという内容です。直子が「過去の世界」を求め続けなければならない悲しみ、哀愁が主人公の目を通して静謐に語られています。果たして直子が自己の抱えた苦しみを解放し、自殺をせずに「現実世界」で生き続けるためには、何が必要だったのでしょうか。●その「問い」に対するひとつの回答が『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のテーマではなかったのかと考えます。●その答えは「あちら側の世界」に「自分の世界」をつくることです。そして「過去の思い出」を大切にしながら生きていくことさえできれば、「現実の世界」でも生きていけたのではないでしょうか。●直子はそれができなかったのです。●しかし『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の主人公はそうすることで、「あちら側の世界」から「現実の世界」へ戻ることができたのではないかと考えます。●それでも疑問が残ります。●「あちら側の世界」に「自分の世界」をつくった人間は、「現実の世界」において本当の自分なのか、ということです。外見上は確かに生きてはいますが、本当の意味で「現実世界」に生きる意味、存在価値があるのかということです。●村上春樹さんは、『海辺のカフカ』で、その答えを示しています。●『海辺のカフカ』は、「あちら側の世界」に身の半分を置いた父に「(お前はいつか)父を殺し、母と姉と交わる」という「血の呪い」をかけられた15歳の少年(カフカ)の成長物語です。●カフカが、悪を継承することもなく、父を現実に殺すこともなく、いかに呪いを打破して「現実世界」で生きていけるのかを描いているのです。●『海辺のカフカ』には佐伯さんという50歳を超えた美しい女性が登場します。●彼女は、半身が「あちら側」へ行ってしまった人間です。●佐伯さん自身は「あちら側」で「過去」とともに生きており、「現実世界」の彼女は虚無感に覆われた残像のようなものです。●またナカタさんという初老の記憶を失った人物も登場します。●ナカタさんは「あちら側」に連れて行かれたしまった人物です。●ですから「現実の世界」では「空っぽ」の人物として描かれています。●「過去の世界」に生き「現実世界」に背を向ける佐伯さんや「あちら側の世界」にすべてを持っていかれ「空っぽ」のナカタさんがそれぞれ最後にとった行動にこそ、心身ともに「現実世界」に戻る(戻す)ための「答え」が暗示されていると感じました。●それは「現実の世界」から「あちら側の世界」へ導く様々な要因である「悪」、その連鎖を断ち切るための「救い(救う)」が必要であると言うことです。
●戦争、暴力という「悪」をテーマに取り上げた『ねじまき鳥クロニクル』では井戸が、宗教をテーマにとした『IQ84』では高速道路の階段が、●無がテーマの『騎士団長殺し』では、祠が「あちら側の世界」へと導いています。●「あちら側の世界」に居るミュウと行ってしまったすみれを描いた『スプートニックの恋人』●『羊をめぐる冒険』の続編である『ダンス・ダンス・ダンス』などなど、機会がありましたら、村上春樹さんの小説が語るテーマの連続性に触れてみてはいかがでしょうか。
ちょっと一息(お勧めの1冊)
◆ちょっと一息(お勧めの1冊)◆
著書名:『ソフィーの世界』 作者名:ヨースタイン ゴルデル
●本日は、ヨースタイン・ゴルデルが著した『ソフィーの世界』を紹介します。●本書はファンタジーとして、ミステリーとしても読むこのできる物語形式をとった哲学入門書です。●難しい哲学の内容を易しく、それも哲学の歴史について非常に分かりやすく整理されているため、哲学について、俯瞰的にそして体系的に学ぶことができる一冊となっています。●手紙を通じて行われる対話形式の軽快なテンポに合わせ、主人公のソフィーと共に考え、感じて歩んでいく時間は心地良く、学びの多い体験となるはずです。●哲学の講義はどれも興味深い謎に満ちているとともに、「人間の存在」について考える上で、素晴らしい構成となっています。●特に、登場人物の関係性が明らかになる中盤以降は、物語にぐいぐい引き込まれ、先を読み急ぎたくなること請け合いです。●本書は1991年に出版され、全世界で2600万部以上を売り上げたベストセラー作品です。発売から30年が経過しても全く古くささを感じさせません。●哲学という古から続く学問がテーマであること、物語としての魅力があることが、その理由だと思います。●600ページを超える長編作品ですが、普段、あまり考えることのない疑問について考えることは、思考の幅を広げることにつながるはずです。●ぜひソフィーと共に生徒になって、哲学の問題に取り組んでみてはいかがでしょうか。●では、簡単にあらすじを紹介します。
●ある日、ソフィー(14歳の少女)のもとへ一通の手紙が舞い込みます。消印も差出人の名もないその手紙にはたった一言、『あなたはだれ?』と書かれています。思いがけない問いかけに、ソフィーは改めて自分をみつめ直すことになります。次の手紙には『世界はどこからきた?』と書かれた紙きれが入っています。ソフィーは今いる世界、そして自分自身が誰なのかという疑問について考えます。「わたしっていったいだれなんだろう?」今まで当たり前だと思っていたことが、ソフィーにはとても不思議なことのように思えてきたのです。それからも問いが書かれた手紙が届き続け、簡単な哲学の講義が始まります。どこの誰とも分からない相手からの手紙ですが、ソフィーはいつの間にか哲学の世界に足を踏み入れていくのです。●不思議なことは他にも起こります。ソフィーの元にヒルデという少女宛ての手紙が何度も届きますが、ソフィーはその少女を知りません。ヒルデとは一体誰なのでしょうか。どんな秘密が隠されているのでしょうか。●その謎が少しずつ明かされていくという展開構成となっています。
●『ソフィーの世界』は、手紙を通しのやり取りとなっているため、疑問を投げかけるとそれに対しての回答を得ることができます。●また、ソフィーは「問い」について真剣に考え、自分の答えを導き出したり手紙の差出人に疑問を投げかけたりします。●そして、そのソフィーが導き出した答えは、私たち読者が「哲学」について考えるためのヒントともなっています。●他の教科書や専門書を読むよりもずっと哲学を身近に感じることが出来る作品となっていますので、ソフィーと一緒に哲学について考えてみてはいかがでしょうか。
美しい日本語、正しい日本語
◆美しい日本語、正しい日本語◆
●まず、「美しい日本語、正しい日本語」を身に付けるためには、とにかく「語彙力」を身に付ける必要があると私は考えています。●自分の言いたいことをしっかり伝え、自分の思いを理解してもらうためには、チーズや小麦粉だけではおいしいピザが仕上がらないように、4番バッターだけでは強い野球チームができないように、吹奏楽の演奏で、管楽器だけでは素敵なハーモニーを奏でることができないように、少ない語彙では、自分の思いを相手に伝えることは難しいのです。●持っている語彙が多ければ多いほど、言葉は色彩豊かになり、人の心に届きます。人の心を打つことができるのです。●そして、語彙力を身に付けながら、その言葉を「適材適所」に使う力を養っていく必要もあります。せっかく身に付けた語彙を宝の持ち腐れとしてしまっては、残念だからです。●例えば、面白いと感じながら読んでいた物語でも、突然、違和感のある文章に出会い、興ざめしてしまったということはなでしょうか。また反対に、「雲が流れ、山がわたしに迫ってきた」や「車窓から風が殴り込んできた」という言葉に出会い、本当に風の動きが見えたり、風の強さを感じた経験はないでしょうか。●「ご覧ください」という意味を表す言葉には、「笑覧」「高覧」「清覧」などがありますが、私的なのか、仕事上のことなのか、文章にしたためるのか、話題の人物は誰か、伝える相手は誰かなど場面によって使い分けることができたら素敵ではないでしょうか。●例えば、「天皇陛下がご覧になった」より、天皇陛下に対してのみ使用する最高敬語を用いて「天皇陛下が天覧(叡覧)なさった」と表現した方が締まった表現となり、相手に与える印象も異なってくるはずです。●このように、言葉は適材適所に用いてこそ本来の力を発揮するのです。●さらに、大岡信さんの『言葉の力』でご紹介したように、「美しい言葉、正しい言葉」とは、実は、表面的な美しさや正しさではなく、それを発した人の思い、気持ち、その基盤となる人間性が大切でもあるのです。●黒髪の描写において「つやつや」「はらはら」「ゆらゆら」という3種類の擬態語を使い分け、『源氏物語』に登場する女性たちの人格をも表現しきった紫式部のすごさを感じながら、ことわざ、慣用句、四字熟語、故事成語などを含めた、日本語という武器を一生のものとできるように、子供たちには日本語を勉強し続けて欲しいと願っています。
ピンク・レディーの未唯mieさん
◆ピンク・レディーの未唯mieさん◆
●本日は、ピンク・レディーの未唯mieさんのインタビュー記事に触れる機会がありましたので、その内容のさわりを紹介いたします。
●ミー(現:未唯mie)さんは、1970年代後半から1980年代初頭にかけて、ケイ(現:増田恵子)さんとピンク・レディーを結成し、ダンス・ミュージック系アイドルとして活躍しました。●「ペッパー警部」でデビューした二人は、、「S・O・S」や「渚のシンドバッド、「ウォンテッド(指名手配)」など9曲連続オリコンチャート入りを果たすなどヒット曲を連発しました。●休み時間になる度に、「UFO」を歌いながら踊る子供たちが社会現象となるなど、その人気はすさまじく、当時小学校6年生であった私に、一世風靡をするとは、この二人のようなことなのだと、実感させてくれました。●私の同級生(女の子)も、ミー役とケイ役になって踊りながら歌っていたことが、今でも思い出されます。
●未唯mieさんは、引っ込み思案な自分を変えたいという思いから、中学校のクラブ活動は演劇クラブを選びます。●クラブ活動をとおして、自分の感情を表現できることに感動を覚えた未唯mieさんは、「人の前に立って自分自身を表現したい」と真剣に考えるようになります。●当時、「夢」について、歌手志望のケイ(現:増田恵子)さんと互いに語り合っていたそうです。●未唯mieさんは、中学校3年生の時、夢(役者になる)を叶えるためにオーディション番組に出場しますが、このことが後のピンク・レディー誕生へつながります。●残念ながら予選で不合格になりましたが、この時、未唯mieさんは、舞台袖で和田アキ子さんが後輩の森昌子さんを膝の上に乗せて頭をなでている姿を見かけます。●親から厳しくしつけられ、親に十分に甘えられなかったと述懐する未唯mieさんは、その姿にうらやましさを感じ、「歌手になれば、先輩からあんふうにかわいがってもらえるんだ」と思ったそうです。●この話を聞いたケイ(現:増田恵子)さんと「一緒に歌手を目指そう」と誓い合い、プロの歌手を目指すことになります。●そして二人は、「プロになるまで決して泣かない。泣いたらビンタする」と約束を交わします。●ピンクレディーとしてデビューするまでには、いくつもの試練があり、苦しい毎日だったそうです。●思うように歌うことができず、レッスンの途中で先生から「レッスンは終わり!」と告げられ、ケイ(現:増田恵子)さんが泣き出してしまったことがあります。●未唯mieさんは、「約束だからね」とケイ(現:増田恵子)さんの頬をたたき、二人で泣いたそうです。●それ以後、プロデビューするまで泣いたことはないと未唯mieさんは語ります。●このようしてピンク・レディーとしてデビューした二人ですが、とにかく多忙な日々を過ごしたことは、引退した後のドキュメンタリー番組で何度か放送されましたので、皆さんもご存じかも知れません。
●ピンク・レディーの誕生には、中学生で「人の前に立って自分自身を表現したい」という強い意志を持ち、一人は役者に、一人は歌手になると「夢」を抱いた二人の少女がいたからなのです。●そして何よりも、「夢」を叶えるための実行力に感動します。「夢」を叶えるための努力に感動します。●もちろん、それを支え合った未唯mieさんとケイ(現:増田恵子)さん、友人(親友)の存在も大きいのです。未唯mieさんは、ケイ(現:増田恵子)のことを「親友」のレベル超えて、最後には「戦友」となったとも語っています。