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ちょっと一息(お勧めのミステリー)

◆ちょっと一息(お勧めのミステリー)
著書名:『カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』『その裁きは死』『ヨルガオ殺人事件』
作者名:アンソニー・ホロヴィッツ

●本日紹介するのは、イギリスの作家であり脚本家でもあるアンソニー・ホロヴィッツが著したミステリー小説です。●ホロヴィッツは、「アレックス・ライダー」シリーズや、コナン・ドイル財団公認のシャーロック・ホームズ・パスティーシュ『絹の家』『モリアーティ』を執筆するなど、多数の著書がある一方、人気テレビドラマ「刑事フォイル」など脚本家として数多くの作品を手がけています。●アガサ・クリスティへのオマージュ作『カササギ殺人事件』では『このミステリーがすごい!』『本屋大賞』の1位に選ばれるなど、史上初の7冠を達成しました。●また〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズ『メインテーマは殺人』『その裁きは死』でも、年末ミステリランキングを完全制覇しています。●そしてこの度、最新作として『ヨルガオ殺人事件』が発刊されました。●翻訳作品は、その訳者の力量に作品の善し悪しが現れてしまうものですが、山田蘭さんの訳も素晴らしいのです
江戸川乱歩横溝正史など古典に分類される作品、現在活躍中の東野圭吾さん(ちなみに、私は『幻夜』『白昼行』が特にお薦め)なども面白いミステリー作品を著していますが、ミステリー小説をあまり読んでいない私が、今一番お薦めするミステリー作家は、このアンソニー・ホロヴィッツです。●ミステリー小説ですので、そのさわりをほんの少しだけ、紹介いたします。

<1>『カササギ殺人事件(上・下)』(山田蘭訳、創元推理文庫)
 葬儀の場面から始まる。古い英国の村で二つの殺人事件が起きる。ここで登場するのは名探偵アティカス・ピュント。しかし探偵アティカス・ピュントの物語(探偵が事件を解決する)がいつしか、そのアティカス・ピュントを生み出した作者アラン・コーウィンの物語へ。事件(アティカス・ピュントが手がけていた)の結末部分が消失したまま、その作者アラン・コーウィンが死んでしまう。その死の真相を追いかける編集者スーザン。アティカス・ピュント事件の結末部分を探し出すためには、知るためには、作者アラン・コーウィンの心理を探る必要がある。そしてその結末部分が解明されたとき、実はアティカス・ピュントの物語が鍵になっていた。つまり、入れ子構造の作品名探偵ピュントの事件とスーザンの事件の両方の謎解きが楽しめる。見事なストーリーに驚嘆する作品。

<2>『メインテーマは殺人』(山田蘭訳、創元推理文庫)
 主人公は著者アンソニー・ホロヴィッツその人。ホロヴィッツは、元刑事のホーソーンから「俺(ホーソーン)が殺人事件を解決する姿をメインとした本を書かないか」と提案を受ける。そんな折、裕福な老婦人ダイアナ・クーパーが殺される。それも葬儀社で自分の葬儀の手配をした日に。そしてクーパー夫人の息子ダミアン・クーパー(有名俳優)も惨殺される。クーパー母子を殺害したのは誰か。謎が謎を呼ぶ。ホーソーンは一向に自分の推理を明らかにしない。焦れた著者ホロヴィッツは自分で解決しようとするのだが。騙される快感に酔いしれる作品

<3>『その裁きは死』(山田蘭訳、創元推理文庫)
 作者アンソニー・ホロヴィッツ本人が再び作品に登場する。『メインテーマは殺人』に続くホーソーン&ホロヴィッツ シリーズ第2弾作品。実直さが評判の弁護士が殺害される。裁判の相手方だった人気作家が口走った脅しに似た方法で。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた謎の数字“182”。被害者が殺される直前に残した奇妙な言葉。弁護士が過去に起こした過ち。偶然な出来事も絡み合い、事件の真相は混迷を帯びる。用意周到にちりばめられた仕掛け(解明のヒント)を楽しめる作品

<4>『ヨルガオ殺人事件(上・下)』(山田蘭訳、創元推理文庫)
 『カササギ殺人事件』の続編。イングランドでホテルを経営しているトレハーン夫妻スーザン(元編集者)を訪ねてくる。ホテルでは8年前に殺人事件が起こっている。娘のセシリーアラン・コーウィンが著した『愚行の代償』を読む。そのことで8年前にホテルで起きた殺人事件の真犯人に気づく。そしてセシリーは犬の散歩途中に失踪してしまう。『愚行の代償』には、本編『ヨルガオ殺人事件』の真相、真犯人を指し示すヒントがここかしこに埋まっている。アラン・コーウィンは『愚行の代償』に、ホテルの人物をモデルとして登場させていたからだ。『カササギ殺人事件』に勝るとも劣らない構成の妙に尽きる作品。